食べ物ではない、報酬を考える…再び。
さて、近ごろ、ある飼い主さんとのメールのやり取りで、『私は短気な方なんでしょうか?』と、自分の犬に対する気持ちの持ちようをお話された方がいました。
その方は、未去勢の大型犬を飼っていて、2歳前のりっぱな若犬です。
未去勢で上手く付き合っていきたいという、飼い主さんの希望もあります。
本能につき動かされる、メスをめぐる牽制や威嚇が目立つようになってきて、今までのように平穏な気持ちで他犬との接触ができなくなってきました。
でも、その子は犬との関係を求め、飼い主さんもそれを叶えてあげたいと望んでいます。
気の合わない♂であれば、そちらへ集中することを避けるために食べ物で誘導しようとしますが、どうも、うまくいかなくなってきたようでした。
お気に入りの子のそばに他の♂犬が近づけば、飼い主さんそっちのけで、ガナリ立て、興奮するそうです。
そんなとき、名前を呼んで食べ物を出そうが、どんなに魅了的な食べ物を出そうが、その子の気持ちを自分に向けることはできなくなってきて、つい、犬を叱りたくなる、と、話されました。
その、叱りたくなる、という自分の気持ちが短気ではないかと、名前を呼んであげてやさしく食べ物で犬の気持ちを自分に向けることができないのが、できの悪い飼い主ではないかと、悩んでいました。
へちまこは『そんなことはないでしょう。誰だって何度も名前を呼んでも振りかえってもらえなければ、だんだんとイラつくのが普通でしょうから…と、お返事しました。
ただ、イラつくのは怒りになり感情が入ってしまいます。
怒りになる前の冷静な叱りは、時として犬の個性によっては必要なこともあると、へちまこは思っています。
それは、リデルを育てる過程で、または、代々去勢をせずに♂犬を飼ってきた過程で、♂の強さを持つ犬には、飼い主の揺るぎのない心の強さが必要になると思うからです。(強さちゅーと、支配性とか権勢症候群とか持ち出さないでね~)
では、イラつく前にどうすればいいかなのですが、へちまこは、犬のしたがる行動に予測をつけ(予め、犬の行動観察はしておきますよ)介入(intervene)し、犬の行動の邪魔をし続けます。
この方法は、リデルのTeachingでも、犬同士の関係で良く使われるものです。
食べ物の報酬を使わずにして、相手の犬の行動をコントロールする…特に、この方法をへちまこは未去勢♂に良く使います。
またリデルのような意思をはっきり持ち、食べ物よりも魅力的なことをしたがる犬にも使います。
『あなたのしたがってることはよくわかるけど、そういう態度ではねぇ~。相手にも失礼だし、少し自分を抑えることも学びなさいよ』ですね。
このトレーニングの極意は、介入に備える。
犬がやるかやらないか、という観察ではなくて、やるんだ、という予測から成り立ち、小さな行動から介入を始めて行きます(相手との距離とか重要かな)
小さな行動からなら、リードやハーネスにかける圧も小さくて済みます。
立ち止まる、方向転換をする、三歩引き下がらせる、押し返す、ハーネスに圧をかける…といった介入の行動を繰りかえしていきます。
また、引き出したい行動も飼い主が考えないとならないでしょう。
そして、あきらめないこと。犬よりも人の方があきらめが早くて、それが怒りに変わるのではないかと、へちまこは思ってますよ。
まぁ、そして、それでも自分でもう無理だ、と、思ったら、去勢を考えればいいのですから。
ケンカ腰になる犬でも、その場にいることを望んでいるなら、その望みを叶えてあげたいと、へちまこは思っています。
だってねぇ、未去勢で有れば、異性に魅かれるのは当然ですし、ライバルに神経質になるのも当然ですものねぇ。
そんなことより、飼い主ばかりを見てりゃぁ、それはそれで幸せかもしれないけれど。
不純異性交友にならないなら、犬だって、女の子と知り合いになりたいぐらいは、認めてあげたいと思うんです。
え、犬には必要ない?まぁ。それぞれの考え方で、どれが正しいなんかはないと思いますけど( ̄▽ ̄)
そうそう、犬は本来、すぐには本気のケンカにはなかなかならないそうです。
未去勢の♂同士でもあっても『ふん、今日はこのぐらいで許してやろう』と、おたがいのプライドを保ちつつ平和的な解決に至ることが多いといわれいてますし、犬の行動学の本でも良く記述されています。
この『今日は、このぐらいにしておいてやろう』という、♂犬同士の犬語の完結の学習が足りない子がたくさんなのも、一理あるのかな~と、へちまこ思う。
ちょっと、話がずれますが、思いだしたことがひとつ…
ある有名な米国のトレーナーのセミナーで、トレーニング時に♀にばかり気が行く犬をどうすればいいか、という質問がありました。
そのトレーナーは、きっぱり『去勢を勧めなさい』でした。
三大欲望のひとつ繁殖欲をカットすれば、食欲が亢進することは広く知られていることです。
♀に対する興味がなくなれば、食べ物を報酬に使うトレーニングはしやすくなりますし、去勢をしておけば病気になる臓器が一つなくなります。災害時のような時でも無駄な繫殖を心配する必要がなくなります(人から見て無駄な繫殖という意味ですよ。どんな生物も自分の遺伝子を後世に残す権利はあるのですから)
家畜としての犬で有れば、当然の処置かもしれません。
人とともに暮らす犬に、異性に目覚める必要はないのですから…
また、別な英国のトレーナーのセミナーでは、自分の犬を去勢せずにトレーニングし、食べ物を使わずとも、未去勢の犬をコントロールしている動画を観ました。
このトレーナーは、チュチュという舌うちを使うトレーニングと食べ物の報酬を組み合わせたトレーニングをするダンバー博士です(言っておくけど、欧米諸国のトレーナーさんたちが最初に伝えたんですよ。アンジェラも使うし)
この未去勢の♂の子に(博士の奥さんの愛犬のようです…記憶違いだったらゴメン)スワレという行動をうまく使って、この子の行動をコントロールするんですね。そのタイミングが実にうまかった(博士だもん、当然ですね)もちろん、この間は食べ物の報酬も誘導もありません。
へちまこは、この未去勢オスのトレーニングを観ていて『ふむ、なるほど。これは犬のしたい行動を報酬に使うトレーニングなのね~』と、感心しました。
以前、当ブログでも食べ物を報酬にしないトレーニングhttp://living-wan.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/post-23ac.htmlで、記事にしたことがあります。
お暇なら、覗いてみてください。
犬の行動をよく観察して細分化が必要かもね。
はぁ、久しぶりに長い記事書いて、疲れた_ノフ○ グッタリ
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コメント
この記事へのコメントは終了しました。
ゴクゴクとすんなり喉を通るこの感じ、へちまこさんならではの なんとも飲み心地の良い記事ですね。
ご馳走様でした。
(◎´∀`)ノ日 オカワリ~ もう1杯♪
投稿: タローの主 | 2011年4月 3日 (日) 23時51分
確かご褒美は"遊んでおいで♪”でしたね。
ほんとに中身が濃くてあっという間の4日間でした。
今期教室やハーネスとロングライントレーニングの延期は残念でしたが、また次回参加させてくださいね。
投稿: ぐーぐー | 2011年4月 5日 (火) 15時36分
タローの主さんへ。
コメントありがとうございます。
短めのコメントに主さん、お身体の具合がぁ~~じゃないですよね?
ご多忙なら良いのですが、ご自愛くださいませ。
では、オカワリどうぞ
投稿: へちまこ | 2011年4月 5日 (火) 21時10分
ぐーぐーさんへ。
初めましてではなくて、ハーネストレーニングにお申し込みしていただいてたんですね。
ありがとうございます。
ダンバー先生のセミナーを聴講していらしてたんですね。
そうそう、確かご褒美は"遊んでおいで♪”でしたね~。
あのアメリカンブルドックの子、ジェントルメンでした。
ハーネスの方は、5月中に開催する準備を整えています。
その節は、またよろしくお願いいたします。
投稿: へちまこ | 2011年4月 5日 (火) 21時16分