シロとハーネスとスプリンクルズとトリーツ・ボックス
すっかりイケメンになったシロ君
へちまこは一年半前、川崎市動物愛護センターから「一頭の心を病んだ紀州犬が飼育放棄で収容されたので、その犬のリハビリを手伝ってもらえないか」という連絡を受けました。
それが、紀州犬のシロでした。
紀州犬のシロには半ば身体的虐待と適切な世話をされなかったネグレクトの状態が見られました。
ごく普通の道も歩くことができず道路にへばりつくばかりで、犬の意思とは関係なしにいきなりセンターというところへ連れて来られた、シロの戸惑いはかなりのストレスだったはずです。...
収容当時は、人間を噛むということを見せなかったシロですが、しばらくすると人のくるぶしやふくらはぎに噛みつくと言う行動が出始め、噛まれないで済む人間はごく限られた人間となってしまいました。
常に何かに怯え、収容のストレスに苛まれ、ひどい皮膚病を併発する、シロ。
当時のシロの安寧はほど遠く、再社会化の大きな関門、無害な人を噛まないを教えるのも、はるかかなたのゴールにさえ思えました。
そのシロを変えて一すじの救いの道をくれたのは、2013年6月に来日したHUTSGが推奨するハーネスの考案者であり、優れたドッグトレーナーでありビヘィビアリストのサリー・ホプキンス、その人でした。
シロはセンター収容時からハーネスユーザーですが(川崎市のセンターではすべての犬にとりあえずはハーネスです)、ハーネスだけではシロのストレスレベルを下げることはなかなかできないままでした。ストレス軽減ツール「スプリンクルズ」を嗜むシロ君。このころはまだ表情が硬いですね
そのシロのストレスを軽減し、再び人との関わりに自信を満たせたのは、サリーが伝えてくれた、ストレス軽減ツール「スプリンクルズとトリーツ・ボックス」でした。
サリーは、センターにいるシロを好意で見て下さり、犬舎の入口に覆いを掛けることや、シロの隣同士になる犬のこと、シロのストレス軽減のために週一回のスプリンクルズは、シロに落ち着きと安らぎをもたらせました。
また、トリーツ・ボックスをなぜ使うか、そうしてそれがもたらす犬が選択できる一貫性の話はとても参考になり、それは今でも川崎のセンターでは実践されています。
サリー訪問から、一年が過ぎ、シロは新たな一歩を踏み出し始めました。一貫性に優れているストレス軽減ツール「トリーツ・ボックス」それでも、このころはまだ身体が硬いです
シロは、トリーツ・ボックスを持つ人間は自分に危害を与えるものではなく、安心で安全であると、認識しはじめています。
多くのトレーナーが、犬に何かをさせて食べ物を与えて人を安全で安心な存在だと認識させようとしますが、シロにはトリーツ・ボックスを基準に自分の意思で自分の行動を選択させることで自信を回復させてきました。
食べ物を持っているかいないかというストレスからシロを解放できたことは、知らない人間に食べ物のために近づかなければならないというジレンマに晒さなくて済むのです。
そのことができるようになってからは、シロの怖いから人を噛むという行動から、怖いならその場から離れればいいができるようになってきたのです。先日のシロ君。眼を見てあげてください。口角を観てください。背中のラインも(*^-^)
そして、とりあえずは、トリーツ・ボックスを持つ人間は、自分にとっていい事が起きる人間である・・・と認識し自分から近づくということを選択するようになりました。
それは、特定の人間から離れて譲渡された場合でも、シロからの信頼を得ると言うことに十分時間をかけてくれるなら、私たちに示すようなシロからの信用と親愛を得ることができる証明でもあるのです。
スワレやフセやヒールポジションで歩くこと、人の指示に寸分も狂わずそれを聞き分けることが良い犬の基準ではなくなり、穏やかな時間の流れの中で人と共に暮らす相互理解の関係が基準であってほしいと、シロのような犬に出会うたびへちまこはは願わずにいられません。
シロ譲渡の道は厳しいことに変わりはないのですが、自分で乗り越えられることが増えたことは、譲渡の道の大きな一歩には違いないと思うのです。
ここまで来るにはたくさんの人の手が必要でしたが、殺処分ゼロというのは箱に詰めて犬をそこに置いておけばいいというものではありません。
一日でも早くセンターの外へ送りださなければ、犬たちの本当の幸せは遠いものなってしまうのですから・・・シロ君の心の安寧はストレスを極力かけないというところから生まれたもの。
最後に、サリー先生へ。
あなたのスプリンクルズとトリーツ・ボックスは多くの犬を救うことのできる優れたツールです。
心をこめて、ありがとう!
最近のコメント