しつけ直す・・・?
しつけ直す?
(すみません、4月にFBへアップした記事です。いまさらですが発掘しました。)
私は、某動物愛護センターで譲渡対象の犬たちのトレーニング的なことをサポートするボランティア・トレーナーとして活動しています。
私の住む市では「動物愛護推進員」という制度がなく、市民なら誰でもなれる(義務講習はあります)市民ボランティアである「犬・猫愛護ボランティア(平成11年度設立)」が公認ボランティアとして存在しています。
個々での活動のほか、センター業務サポートは職員の手助けのみならず、収容動物のケアの面では大切な活動の一つになります。
私は、犬たちのリホームへ向けての心身面でのサポートが主な活動になりますが、いわゆる訓練やしつけ直すということをしているわけではありません。
もちろん、咬む、噛む、吠えるなどの対応や対処、排泄のコントロールなどは、譲渡先でも犬が困らないようにするために大切なトレーニングになりますが、スワレ、フセ、オテ、脚側で人につき従う散歩スタイルは犬に教えませんし、要求もしません。
センターの収容犬は常にストレスに苛まれています。
どんなに私たちや職員が手をかけ、やさしい言葉をかけようが犬たちのストレスは常にマックス状態になってしまいます。
犬たちがご機嫌よく、ここでの生活を送れるように、犬たちの負担になるようなトレーニングはいっさい排除してきました。
ストレスを極力かけないことで、センター業務がスムーズに進みますし、動物たちも穏やかに人間に接してくれるのです。
ここのセンターでも私が活動を始めた10数年前、犬にはスワレやフセやついて歩けやを、チョークチェーンを使って教えていました。
暗くて狭い収容犬舎からやっと出してもらえたかと思うと、犬の了解なしにチョークチェーンが装着され、お決まりの服従訓練が始まります。
犬たちは否応なしにこの環境に連れてこられ、否応なしに殺処分と譲渡対象に選別され、否応なしに訓練されてきました。
犬たちの生活の質の向上のはずのトレーニングなのに、痛みや嫌悪を加える犬具を使うことに疑問が上がり始め、某市動物愛護センターでは現在、ハーネスによる犬のストレスマネジメントを行っています。
上の写真は、犬は嗅覚を使うとストレスが軽減されるのでそれを取り入れたアクティビティになります。
センター敷地外への散歩です。犬が堂々と前を歩き、好きな時に匂いを嗅ぎ、好きな時に排泄(もちろんあと始末します)をし、公園に行き、近所の人に声をかけてもらうこともよくあります。
散歩は、どの犬も日に3~5回。
この犬もここへ来たからはハーネスです。
収容犬の中には、特に中型~大型犬には良くチョークチェーンが装着されたままで保護されます。
その犬たちのチョークチェーンを外し、ハーネスに換えても突然引くこともなく歩いてくれます。
多分それは良く訓練されていたからと思う人もいるかもしれませんが、ハーネス装着後は犬たちの表情は穏やかになり、解放されたような行動も見られるようになります。
写真:行政獣医師による犬の散歩です。女性は男性の上司なので散歩指導をしているところです。
散歩など現職の仕事と思われるかもしれませんが、獣医師は犬の治療などに携わるため、犬との意思の疎通がなければ抵抗や反抗に遭ってしまいます。
犬の信頼や信用を得、治療やケアに積極的に参加してもらうためにも、犬の日ごろの世話をすることは大切なことです。
獣医師だから治療のみ、動物たちの身体に触れるのはその時のみであれば、お互いの苦痛や不快は大きなものになりますが、毎日のケアに獣医師が参加することで犬たちも安心して身を委ねることも多くなりました。
獣医師の仕事もはかどります。
保護という名の不自由な環境での収容は、市民生活を守るうえでは大切な業務になりますが、生き物、命を扱うことがそこにはあります。
私は某市動物愛護センターの変貌数十年を見てきました。
「犬猫のアウシュビッツ」と、抗議を受けていた昔のセンターから、前例を削除することは現場にとって並大抵なものでありませんでした。
いまでは、某市動物愛護センターは限りなく殺処分ゼロに近い施設になりましたが、それまでには職員たちの苦悩や苦痛があり、サポートするボランティアの苦痛や苦悩がありました。
ここへ収容されるどうぶつたちは、厄介な動物たちではなく、人の手によって苦痛な生活を強いられているという考えで、手厚いケアがされ、トレーニングは正の強化を使い、人間からの恫喝、脅迫、支配的な行動はいっさいありません。
安全で安心な動物を再び送り出す・・・それがここで最高の希望と励みとなっているようです。
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