お散歩コースにある公園には、いつも他犬に激吠えするポメちゃんがいます。
他犬がいなければ、緊張もなく、のびのび快活に動いているのですが、そこへ他犬が近づこうものなら、激しく吠えかかり突進します。
たぶん、社会化期に良質な同族との社会化がなされず大人犬になってしまったんでしょう。
だからと言って、このポメちゃんが同族と仲良くできないかわいそうな犬でも、吠えてダメな犬ではありません。
飼い主さんの持っていた情報や経験が不足していただけで、飼い主さんとの関係が悪くて、ポメちゃんが他の犬に吠えかかるわけではないのですから。
この部分にすぐに『主従関係』や『上下関係』を持ち出す人がいますが、それらは全く的外れなアドバイスになります。
また『愛情不足』でもありません。
『距離』という環境の不足だけなのです。
冷静に犬の行動を観れば、他の犬がポメちゃんの許容する距離外であれば、ポメちゃんは安心で飼い主さんとお散歩をしているのですから。
他の犬がポメちゃんの環境へ入り込むことで、ポメちゃんの吠えかかりという行動が現れてくるだけなのです。
なので、私たちは(リデル・チェシア)このポメちゃんを見かけると、毎回、50m以上は距離をとることにしています。
ほら、我が家にもポメラニアンカモが仲間入り・・・発現する行動が良く似ているものですから、そこはこのポメちゃんのことが気になるのです。(笑)
この日も、ポメちゃん、近づくゴールデンに激吠え。
このゴールデンの飼い主は、吠えるポメちゃんへの気遣いは、いつもまったくなくズンズン近づきます。
ゴールデンという犬は良くも悪くも社交性が高すぎて、相手の行動を気にしないおおらかさで他の犬を追い詰めていることがあります。
飼い主さんも、「うち犬は安全、吠えられても大丈夫、気にしない」と思ってる人もいて、相手の犬の思いや行動には無頓着になりがちなところを見かけます。
このゴールデンもとても良い子なのですが、飼い主さんの気遣いがなさ過ぎるのです。
ポメちゃん飼い主さんも高齢だからかなのか犬を飼うのが初めてなのか、ポメちゃんが離れようとしないからそのまま佇み、ポメちゃんの吠えに任せるのです。
ポメちゃんは、けして喜んで吠えているわけではないでしょう。
一通り、大暴れし(吠えかかり、回転、リード噛み、突進)ゴールデンの姿が見えなくなっても吠えていたポメちゃん、で、こちらへ気づいた。
そのポメちゃんにBAT環境をご提供することにしました。
これらは、相手の犬にとってもBATの環境を与えることになりますし、自分の犬にもBAT本番のリハーサルとなります。
以下は、写真を入れてのBAT環境設定の説明をします。

ポメちゃん、こちらに気づきました。(飛んでない、回ってない、吠えてない)
先ほどの大暴れですでにアドレナリンはMaxでしょう・・・
何かの刺激が入れば、すぐに反応が出てしまう状態です。
≪BAT・・・Behavior Adjustment Training(ビヘイビア・アジャストメント・トレーニング)は、グリシャ・スチュワートが体系化した、攻撃性、フラストレーション、恐怖のための行動調整トレーニングです≫・ 詳細は、当ブログに書かれていますので、ブログ内検索をお願いします。
・ 使用犬具 バランスハーネス、BATリード約5m、食べ物なし。
・ 極力、指示しないで適切な行動が出るような環境をアレンジ。こちらの犬たちもそれとなくポメちゃん、観察。
回り込んでポメちゃんの後ろを通過かと思うと(砂地のグランドを横断です、いつもなら少し見えている築山に上ります)その手前で(約50m)匂いとりしながらもポメの動きを観ながら左折し、その先ジグザグに進んでさらに離れる・・・もうここで、
犬(チェシア・リデル)が自らBATを開始しています。50mでゴールデンに吠えかかってたので、こちらは60mでスタートです。
刺激は小さければ小さいほど、犬にとって安心感を与えます。
十分に離れていますが、ポメちゃんもこちらの犬たちもお互いわかっています。

ポメちゃん、吠えずにこちらを観察。
すっごい離れてますけど、これがベスト!なのね、ポメちゃんには!

チーも匂いとりしながらポメちゃん、意識するも平常心対応。
ポメちゃんも、匂いとり・・・。
リデルは、一貫して興味なし←これはこれで犬式メッセージです。
ジグザグ歩行と匂いとりを繰り返し、ポメちゃんもその場の脅威を感じてないのか頭部も良く動き出しました(本当はこちらに近づくことなく動いてほしいのですが・・・)
ポメちゃん、観てますよね。
チェシアもこの匂いとりを私から少し離れたところでやりだしてます。
偶然ではないんですよ。
これぞ、サイレント・コミュニケーションの世界!
犬が自分で環境をコントロールする行動です。
私たちも、居心地のいい場所や座席を選択しますよね。
なるべくストレスがないように環境をコントロールしているはずです。
それが、快感ではないですか?
では、なぜ、それが快感なんでしょうか?
人に言われて決められた環境より、誰だって、自分で選択できる環境を整えるために起こる行動で環境をコントロールできたことが快感なんです。

ポメちゃんの動きを観る、チェシア。

ポメちゃんが何をしているのかというと、匂いとりです

・・・適切な行動ですよね~。
落ち着け自分、こちらには気にしないで、近づかないで・・・
で、これを何度かお互いが繰り返していました。
フッと、観る・・・どちらかが匂いとり。

最終的には、我が家との距離30mほどで、ポメちゃん、この場を自ら離脱←すばらし~~~
ポメちゃん、自分の選択で環境をコントロールできて、お尻ぷりぷりでオジサン連れてお帰りになりました
犬たちは人間によって、自由な行動の選択ができない環境にいます。
こちらへおいで、向こうへ行こうよという指示があれば犬を救うことができるから声かけすればって思う人もいますが、それは犬が選択した行動ではありません。
へちまこにとって長年のテーマであった、犬たちの自由な意思をなるべく尊重は、BATというトレーニング方法によって、固まりつつまります。
それは、Empowerment・・・辞書的な意味は「誰かに力を与える」←すばらしいですよね!
・ 犬たちに時間や選択肢、コントロールを与える。
・ 犬たちに環境(人も)とトレーニングをコントロールさせる。
人間は犬よりも多い選択肢の中で、自分で行動を選択することでストレスを軽減しています。
犬にトレーニングやしつけ方や訓練が必要であっても、それらは人間が選択したことで、犬たちが選択したことではありません。
また、犬が困っている環境においても自分で解決できたこと、これでよかったんだ!できた!という達成感があれば犬にとってもプラスでしょう。
ただ、あまり多くの選択肢では犬も悩みますから、今いる環境でその犬にとってのベストな行動の選択ができるように環境のアレンジは人間がこっそり、手を貸してほしいと願っています。
もしどこかで、あなたの近くで激吠えの犬に出会ったら、BATの環境を提供してみてください。
また自分の犬がそのような犬であったら、無理やり、すれ違わなくてもいいし、馴らす必要もありません。
まずは、嫌なものには近づかないでいい、離れよう(回避)という行動が出るような環境をアレンジしてください。
私のチェシアもリデルも、犬は苦手ではありませんが、相手の犬の行動からその情動の状態を知り、自分にとって適切な行動を選択しています。
ああ、あの子は近付いてほしくないんだな・・・近づかないから落ち着いてを伝えています。
好んで吠えられる犬も、攻撃的な振る舞いに遭遇したい犬もいません。
ポメちゃんにとっても、私の犬にたちにとっても、BATの環境設定は、双方を救える環境なんです。
人間は苦業が好きで、わざわざ険しい道程を選択しますが、犬たち(動物たち)は、より安全で安心な道程を選択するはずです。
人から見た問題行動の消失過程が、険しい山道を登らせるのか、遠回りであっても緩やかな登り坂を選ばせるのかの違いです。
へちまこは、緩やかでなだらかな登坂を人間が選択することを、切に願っています。
そして、ポメちゃん、いつか楽な道を自らドンドン選択できるようになるといいなあ~と、思っています(また会ったらやろう)

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